耳をすませば、微かに聞こえる鳥の声。
昨日降った雨の匂いが、まだあたりを漂う。
霧で遠くがかすんで見えるが、朝日はまだでていない……
目はとっくに覚めているのにベッドから出ず、僕は毎日の習慣のようにベッドの横にある窓をのぞいていた。
「早く起きないか、シオン! 」
大きな男の怒鳴り声――僕にとってこれから始まる一日の合図のようなものだ。
僕はベッドから急いで起き上がった。
「ごめんなさい。起きてはいたんですけど、ベッドから……」
言い終わる前に、また怒鳴り声が聞こえる。
「言い訳はいい。早く支度をして畑に来い! 」
今、大声を出している人は、セブネル。
年齢は三十歳で小さい頃から農業を営んでいたらしく、その成果、今では町外れにある畑三人分の領地を一人で栽培している。
性格は周りの農家の人たちが困っている時には真っ先に助けにいってしまうように、自分より他人のことを第一にする。
また、人並み以上の洞察力で物事の先を見るのが得意だったりする。
例えば、年々変わる野菜の成長の変化にいち早く気付くんだ。
しかし仕事の時は人が変わり、僕が遅刻をしたり、野菜に気持ちをこめないで水やりをしているとすぐ怒る。
ちなみにセブネルさんは僕の父親ではない。
僕の名前はシオン。
年齢は十七歳で、両親と将来についてケンカをし、家出をして二年になる。
家出をした後、働こうと思い僕はあちこち雇い主を探したけど、年が若すぎるという理由で断られ続けた。
だけど、セブネルさんは家出した僕の気持ちを理解し雇ってくれた。
二年たった今では、普段の生活はお互い主従関係というより、師弟や兄弟のような関係になっている。
しかし、仕事の時は別である。
今日は何回怒られるのかと考えながらも急いで朝食をすませて、家の前にある青々とした葉が立ち並ぶ野菜畑に向かって走った。
+ + + + + +
いつの間にか地平線にあった太陽が頭上までのぼっていた
結局、朝の遅刻以外は怒られる事はなく作業に没頭していたせいか昼になったことに気が付かなかったらしい。
休憩の時間になり僕は畑の近くにある丘の上に登って、大きな木の木陰に入り辺りを見回した。
今日は近くの農家の動物がやけに落ち着きがないように見える。
そういえば、朝に鳥の声が聞こえていたのに、今は何一つ聞こえなか……
突然地下からのうなり声のような音ともに地面が大きく揺れた。
僕はその揺れに立っていることが出来なく倒れてしまった。
受身を取ろうと地面に手を置くとどういうことか変な感覚が体中に伝わってきた。
何だろう……地下から湧き上がってくるようなこの感じは。
+ + + + + +
揺れはすぐにおさまった
ふらついた足で辺りを見回す。
地面に無数の亀裂が入っていたが幸い畑には一つも入っていなかった。
普段このような揺れなんて起きた事もなかったのに……
畑の状態を見に来たのだろう、セブネルさんが丘の上に登ってくる。
「大丈夫か! 」
「はい、僕は大丈夫です」
「そうか。にしてもさっきの揺れはなんだったんだ」
揺れもそうだが、僕にはさっき地面から全身に伝わったあの感覚の方が気になっていた。
「畑も……大丈夫そうだな。よし午後の仕事に戻るぞ」
何か嫌な予感がする。
そう思うと午後の仕事には気持ちが入らなかった。
そんな姿を見てか、セブネルさんも怒らないで「気にするな」と言ってくれた。
どうやらあの揺れに不満を持っているのは僕だけではないらしい。
+ + + + + +
仕事を終え夜になっても僕はまだあの揺れのことが気になっていた。
セブネルさんは気にするなと言っていたがやはり嫌な予感がする。
窓をのぞくと、星空は昨日と変わらない姿で輝いていた。
僕の考えすぎなのかもしれない……
そしてゆっくりと目をつぶった。
この日から僕たちの旅が始まった。
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