キャー
無音の真夜中に人の叫び声が鳴り響く……僕はその声で目が覚めた。
また隣の家のおばさんが、体重が増えたことに驚き悲鳴をあげたのだろうと思いながら、気晴らしに夜景を見ようと窓をのぞいた。
――まず目に飛び込んだのは遠くに見える町を包む赤々とした炎だった。
町が燃えている。一軒や二軒といった話ではない。
町全体を炎が覆っていた。
いったい何が起きているんだ。
どうして町が……
さっきの悲鳴なんてどうでもいい。
とにかくセブネルさんに知らせよう。
急いで、ベッドから起きあがり部屋から出た。
その時二度目の悲鳴が聞こえる。
低くて太い声……セブネルさんの声だ!
声の場所は畑の方からだった。
靴を履いて、急いで声のあったほうへと向かうと目の前には見た事もない生物がいた。
二足歩行だが前かがみに立っていて、背丈は人と変わらないが手足が人のニ倍ぐらい太く爪は鋭い。
獣のような口からはみ出るほど大きい牙を持っていて、全身真っ黒な皮膚が不気味に光っていた。
しかも一匹ではなく、今日の地震で起きた地面の亀裂から一匹、二匹……どんどん数を増やしながら外に出ている。
見ただけでも五十匹はいるかと思った。
しかも腹が減ったとも思わせるよだれが地面に垂れて水溜りを作っていた。
さっき見た町の炎もこの怪物が原因なんじゃないかな。
それなら早くセブネルさんを見つけないと…… 怪物に襲われないよう警戒しながら辺りを見回すと畑の真ん中でクワを振り回して勇敢に怪物と戦っているセブネルさんの姿があった。
「この怪物……野菜を食うのをやめろー」
必死に畑を守ろうとする声と同時にクワを怪物めがけて振り下ろす。
しかし怪物はそのクワの刃が刺さっているのをなんとも思わずに、地中に埋まっている野菜をむさぼり食っていた。
野菜に夢中で痛みを感じないのか、もともと痛みという感覚がないのか……でも野菜に夢中な今なら怪物に襲われないでセブネルさんを助けられる。
急いでセブネルさんの近くまで怪物に触れないように行った。
「セブネルさん!こいつら今は野菜を食っていますけど、この数です。数時間もしない内になっくなってしまいます……だから今度は人を襲うかもしれません。早くこの場から離れましょう。」
怪物の野菜を噛む音に負けないように大きな声で叫んだ。
「逃げたいのならシオンは早く逃げろ!オレは……ここに残って、こいつらから畑を守る。」
やはりか……セブネルさんはこの場を離れようとはしないということは心の中でわかっていた。
自分が大切に作った野菜を荒らされるということを許せないのは自分も同じだからだ。
でも、このまま黙って逃げてセブネルさんを死なせるわけにもいかない。
「すいません……」
力を込めた拳がセブネルさんの腹を直撃する。
「うっ……シオ…ン…お前……」
気を失って倒れる体を背中に乗せ、さっき見た町とは逆に走った。
走っている途中、あたりに人のけはいがしなかった……しかし、よく見ると僕たちが今通っている高低差が激しいけど町へは一番早く着く道の近くにあるいつも作物を運びに行く時に通る平坦な道のほうで少し灯りが見えた。
その灯りを見て、僕は少しほっとした気持ちになっていた。
そして周りの景色が変わり、木が一面を覆う場所になったときだった。
グゴオォォォォ
地面全体を震えさせるような怪物のおたけびが聞こえた。
もう畑の野菜を食い尽くしたのだろうか。それなら早くこの森を抜けなくてはいけない。
さっき見たとき怪物の顔には鼻のようなものもついていた。
もし鼻が利くのであれば、すぐこの場所に追いついてしまう。
人一人を背に担ぎ足に力を込めて、暗く静寂な森の道を走った
+ + + + + +
―― だいぶ走っただろうか。
体中に汗が流れて、もう疲労が限界に達していた。
畑を出たときは頭上にあった月が地平線の近くまで傾いている。
もう朝か……あと少し走れば森を抜け安全な街につく……もちろん深夜見た街のように怪物にやられてなかったらの話だ。
その時、突然目の前に薄暗さを一瞬にしてかき消す太陽のような球体が現れた。
僕はとっさに手で目をふさいだ
―― 数秒の間輝いていた光が徐々に消え、現れたのは怪物ではなく異様な服を着た、年は同じくらいの少女だった。
「君は…」
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